たばこの加熱温度・燃焼と生成する化学物質の関係性

私たちは、数十年におよぶ紙巻たばこの研究で蓄積された知見を活かし、リスク低減製品から生成する化学物質の量や種類を考察しています。

製品の味や香りをつくる、あるいは健康懸念物質を低減するにあたり、ベイパー中の化学物質の組成や、それに影響を与える加熱温度やたばこの物理/化学的特性等の要因を理解することが重要です。

特に、たばこ葉を燃やすかどうかは、最も重要な要因です。通常、加熱式たばこの加熱温度はたばこ葉の発火点以下に設定されています。燃焼を伴わないため、加熱式たばこから生じるエアロゾル中の化学物質の量は、紙巻たばこと比較して大幅に低減されます。 また、その低減の度合いはたばこ葉が熱せられる温度によって変化します。

たばこの加熱温度・燃焼と生成する化学物質の関係性

 

一般に 、たばこ葉の加熱温度が低い場合、健康懸念物質の生成は抑えられますが、たばこの自然な味わいや香りも少なくなります。これに対し、高温でたばこ葉を加熱すると、化学物質の量が増加する一方で、たばこの味・香りも強くなります。私たちは、これまで長年にわたって蓄積した、燃焼や加熱温度とたばこ葉から発生する化学物質に関する知見を活用することで、お客様に満足いただける製品を設計・開発しています。

赤外線加熱装置によるエアロゾル成分生成に関する研究

農産物である葉たばこは、多くの植物と同じように、糖やアミノ酸、無機化合物などさまざまな種類の内容成分を含みます。

たばこを加熱または燃焼することで、これらの内容成分が変化し、私たちが提供する製品の提供する味や香りが実現しています。よりお客様にご満足いただける製品を開発するために、これらの煙やベイパー中の成分が生成するメカニズムを赤外線加熱装置を用いて研究しています。赤外線加熱装置は、たばこやその他の原材料をさまざまな温度条件で加熱できる機械です。試料を加熱して発生したベイパーを専用のフィルターで捕集し、最新のガスクロマトグラフィー質量分析法(gas chromatography mass spectrometry: GC-MS)などの分析機器を用いて、 着目したベイパー成分を定量します。それらの分析は、ISO に準拠した方法、または CORESTA (Cooperation Centre for Scientific Research Relative to Tobacco)が推奨する分析法に従っています。試料の種類または加熱条件の違いとベイパーに含まれる成分の量の関係を科学的に考察し、製品設計や新しい技術の開発へ活用しています。 

赤外線加熱装置によるエアロゾル成分生成に関する研究

ガスクロマトグラフィー/オルファクトメトリーを用いた香り成分に関する研究

ガスクロマトグラフィー/オルファクトメトリー(GC-olfactometry)は、化学物質の混合物を成分ごとに分離し、訓練されたパネルがそのにおいを嗅ぐことで、それぞれの成分の持つ香りの特性を同定する手法です。

お客様に喜んでいただける製品をつくるために、私たちは香りに関する研究をしています。たばこの煙には6000種[1] 以上、加熱式たばこや電子たばこのベイパーにはそれよりはるかに少ない数の成分が含まれていますが、それらの様々な成分には香りを持つ成分もあれば、そうでないものもあります。私たちは、たばこの煙やベイパー中の成分を、化合物を一つ一つ分離し測定する各種のガスクロマトグラフィー(GC)分析装置を用いて同定・定量します。より高度な分析のため、分離精度の高い一次元/二次元切替ガスクロマトグラフィーや検出感度の高い飛行時間型質量分析計(TOF-MS) のような最新の機器も用いています。

ガスクロマトグラフィーによって分離された成分を訓練されたパネルが嗅ぐことで、香りを有する成分を特定します(GC-オルファクトメトリー)。

この技術を用いることで、様々な品種や生産地・グレードによって異なるたばこの香り特徴や、香料に含まれる香り成分の情報を理解することができます。私たちはこの香りの分析結果を活用して、最適なたばこ葉のブレンドやフレーバーの開発に取り組んでいます。

[1] The Chemical Components of Tobacco and Tobacco Smoke, Second Edition, Alan Rodgman and Thomas A. Perfetti, 2012

ガスクロマトグラフィー/オルファクトメトリーを用いた香り成分に関する研究

エアロゾル粒子の粒子径測定に関する研究

紙巻たばこの煙やリスク低減製品*のベイパーに含まれるエアロゾル粒子の大きさにより、お客様の使用時の感覚が異なってきます。 

私たちは、お客様に満足いただける製品を開発するため、ベイパーの重要な物理特性の一つであるエアロゾル粒子径の測定に取り組んでいます。

エアロゾル粒子の粒子径測定に関する研究

紙巻たばこから燃焼により発生する煙と異なり、リスク低減製品*から加熱により発生するベイパーは水を多く含み、蒸発しやすい状態となっています。エアロゾル粒子径の測定には様々な方法が存在しますが、それぞれ得手不得手があります。たとえば、一般的に高エアロゾル濃度での測定は難しいとされています。これを解決するために装置内部でエアロゾルの希釈を行う方法がありますが、ベイパーのエアロゾル粒子は蒸発により縮んでしまうという問題が生じます。そのため信頼できるデータを取得するためには、様々な環境やエアロゾルの状態を考慮し、適切な条件や装置を選択することが重要です。私たちは各種計測機器を使いこなす知識と、最新の計測機器 (レーザー回折式粒径測定装置や高速応答微粒子粒度分布計など) を駆使することで信頼のおける科学的データを収集し、リスク低減製品*の開発に活用しています。 

葉たばこの育種と耕作法に関する研究

製品の味や香りをつくるのに必要な特徴をもった葉たばこを大量生産するためには、葉たばこの育種と耕作法に関する研究が重要です。

葉たばこ畑

葉たばこの品種およびその栽培方法は、葉たばこの内容成分に大きな影響を与えます。どのたばこ品種を選び、どのように育てるかが、紙巻たばこや加熱式たばこを設計するうえでの重要な要素です。

加熱式たばこでベイパーを発生させる方法と紙巻たばこで煙を発生させる方法は異なります。そのため、加熱式たばこに求められる葉たばこの性質は、紙巻たばこのそれとは異なります。加熱式たばこでより良い味や香りを実現するために、私たちが保有する数千のたばこの品種のストックの中から、適切なものを選択します。さらに、それぞれの品種に対して適切な栽培方法を開発しています。

大量生産にあたっては、葉たばこ生産農家と協業して、私たちの製品に必要な葉たばこ品種を適切な栽培方法で耕作していただきます。

加熱式たばこ

香料研究

香料研究は、製品コンセプトに合致した香りを実現するために必要な基礎研究です。

製品の持つ味・香り は、成人の喫煙者やベイパー製品使用者が新たなリスク低減製品* を試す大きな理由の一つとなっています。香料成分は ほんのわずかな量でも、それぞれの製品の香りや味わいを特徴づけることができます。

私たちは紙巻たばこの開発を通じて、たばこ葉が本来もつ味や香りを引き立て、ブランド固有の味・香りを発現する香料の開発に取り組んできました。こうして得られたノウハウは、加熱式たばこの開発にも利用されます。電子たばこには、たばこ葉は使用されていませんが、紙巻たばこの開発で得られた知見や香料素材は、電子たばこのリキッドの開発にも役立っています。

私たちが使用する香料成分は、各地域・国が定めている添加物基準に準拠し、かつ私たちで各国の文献や実験データにより安全性が確認されたもののみを使用しています。また各種デバイスの良さを活かした味・香りを愉しんでいただけるよう、香料設計を行っています。

関連情報

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リスク低減へのアプローチ
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ベイピングとは
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エアロゾル化学